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一日一冊、本を食う

長年の積ん読本を読み切るブログ

カーマイン・ガロ『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

  • 作者: カーマイン・ガロ,外村仁解説,井口耕二
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 126人 クリック: 3,690回
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Carmine Gallo - The Presentation Secrets of Steve Jobs

ジョブズは魅力的なセールスマンであり、見込み客を観客に変え、顧客を伝道者に変えるたぐいまれな能力を持っている。(p.7)

スライドショーとは専門用語を満載した単調であきあきするものであるのが普通だったが、ジョブズの登場により、それが、ヒーローに悪玉、脇役、それにすばらしい背景までがそろった演劇へと変化した。(p.8)

ビジネスの世界では、プレゼンテーションとは情報を提供するためのものだと考える人が多い。ジョブズは違う。スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは体験を生みだすことを目的に作られている。聞き手の心を動かし、沸き立たせ、やる気を起こさせる体験——「現実歪曲フィールド」を構築するのだ。(p.9f.)

本書の目的は、アップルというブランドの背景にあるストーリーをジョブズがどう構築し、どう発信しているのか、その方法を細かく分解・検討することだ。以下のことをジョブズがどのように実現しているのか、それを明らかにするのだ。

  • メッセージを構築する
  • アイデアを提示する
  • 製品や未来への期待を高める
  • 記憶に残る体験を提供する
  • 顧客を伝道者に変える(p.11)

本書は、ジョブズが好んで行うプレゼンテーションのメタファー、3幕構成の演劇という形をとった。実際、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは仕立てが演劇によく似ている。巧みに組み上げられ、十分に練習された舞台によって人々を楽しませ、勇気を与えて元気にするのだ。(p.14)

自信を持って聴衆を惹きつけるには、ストーリーに力がなければならない。(p.15)

シスコのCEO、ジョン・チェンバース//が売っているものは、実は、我々が暮らす、仕事をする、遊ぶ、学ぶというその方法を変える人と人とのつながりなのだ。
スターバックスのCEO、ハワード・シュルツ//が売っているのは、職場でもなく家庭でもない「第3の場所」だ。
資産形成や金融問題の大家、スージー・オマーン//が売っているのは、金融という世界における自由という夢である。
同じように、ジョブズ//が売っているのは、人の可能性を束縛から解き放つツールなのだ。(p.16f.)

私は数多くのビジネス・リーダーに会ったことがあるが、退屈なはずのものを取り上げてすばらしいブランド・ストーリーが作れる人はごくわずかしかいない。
これは、人を惹きつける力を持つコミュにケーターに共通する能力である。難解な製品や日常的な製品に新たな意義を持たせる能力だと言ってもいいだろう。
本書を読みながら、「私が売ろうとしているのは、本当は何なのだろうか」と自問してほしい。ウィジェットを見せただけでは、それがどうしたと言われるのがオチである。そのウィジェットで暮らしがどうよくなるのかを伝えられれば、説得は成功する。同時に聞き手を大いに楽しませることができれば、伝道者を得ることができる。このことを忘れてはならない。(p.16f.)

スティーブ・ジョブズは世の中を救いたいという熱意に突き動かされている。「宇宙に衝撃を与えたい」と思って仕事をしている。心の底かからわき起こる情熱…
ジョブズは、娯楽を大きく変えるというビジョンに心を奪われ、21歳の若さで、友人のスティーブ・ウォズニアクとともにアップルを創業した。その情熱は伝染力が強く、彼の周囲にいる人を次々巻きこんだ。この情熱こそ、ジョブズのプレゼンテーションから伝わってくるものなのだ。(p.17)

我々の心の中にも情熱が潜んでいる。その情熱をとらえ、魅力的なストーリーへと仕上げて、周りの人がビジョンの実現を手伝いたいと思ってしまうようにする…
あなたのアイデアや製品が顧客の暮らしを大幅に改善する可能性は存在する。しかし、製品がどれほど優れていても、そのブランドを世界に広める伝道者がいなければ、その力が弱ければ何の役にも立たない。あなたが人々を説得できなければ、製品の成功はありえない。(p.17f.)

スティーブ・ジョブズは//ストーリーを組み立てるときは紙と鉛筆という昔ながらの方法を使う。
優れた映画監督と同じように、ジョブズも、「カメラ」を手にする前に(プレゼンテーションソフトを起動する前に)筋書きの絵コンテを作る。(p.24)

引用

Gregory Berns - Wikipedia

ドイツの社会学者、マックス・ウェーバーはカリスマ性を「個性が持つ特質のひとつで、その特質があるがゆえに一般の人とは一線を画し、超自然的である、超人である、あるいは少なくとも傑出した力や特質を持つとして取り扱われるもの」だと定義した。(p.7)

Charisma is a certain quality of an individual personality by virtue of which he is set apart from ordinary men and treated as endowed with supernatural, superhuman, or at least specifically exceptional powers or qualities.
Charisma - Wikipedia

「プレゼンテーションは、事実上、ビジネスのコミュニケーションツールとなった」と、プレゼンテーション制作の名手、ナンシー・デュアルテが『スライドロジー(Slide:ology)』に書いている。「会社を興す、製品を発売する、地球環境を救う……いずれも、プレゼンテーションの出来不出来が左右する。コミュニケーションが下手なら、アイデアや努力、場合によっては自分のキャリアさえも切り捨てられる可能性がある。だと言うのに、毎日、世界中で行われている何百万ものプレゼンテーションのうち、上手に行われているのはごくわずかにすぎない」
デュアルテは、アル・ゴアの35ミリスライドを有名なドキュメンタリー、『不都合な真実』へと変えた人物である。(p.7f.)

slide:ology[スライドロジー]

slide:ology[スライドロジー]

マイケル・ヒルツィック「…ジョブズはアップルのビジョナリーであると同時に祭りの客引きでもある。後者の側面が知りたければ、2001年10月に行われた初代iPod発表の動画を見ればいい。ドラマチックに会場をコントロールする姿は圧倒的だ。私も先日、この動画をユーチューブで見たが、どのように話が進むのかを知っているにもかかわらず、思わず身を乗りだしてしまった」。(p.9)
Cf. 未来をつくった人々 - Wikipedia

www.youtube.com

  • 昇進する

最底辺から一段上がったら、しゃべったり書いたりした言葉でどれほど他人に影響を与えられるのか、それが実態としての自分の能力を規定する。——ピーター・ドラッカー(p.10)

As Peter Drucker tells us, “As soon as you move one step up from the bottom, your effectiveness depends on your ability to reach others through the spoken or written word.”
Wilbers:  CBR Article

CNBCの「ザ・ビッグアイデア」に出演したとき、ホストのドニー・ドイチュが人々に元気と勇気を与えていることに感嘆した。そのときのドイチュのアドバイスにこういうものがあった。
情熱を現実の利益という形に変えた人を見たら、こう自分に問いかけてほしい。『自分にもできるんじゃないか』と」(p.12)

ジョブズ自身、こう語っている。
「質を測る物差しに自らならなければならない。卓越さが求められる場に慣れていない人もいるからだ」(p.13)
Steve Jobs - Wikiquote(出典不明)

ジョブズは「エレクトロニクス・ハードウェアの塊などという、一見おもしろくもおかしくもないものを取り上げ、それをネタに目が離せないドラマを作ってしまう名人だ」と『スティーブ・ジョブズの再臨』(毎日コミュニケーションズ刊)でアラン・デウッチマンが書いている。(p.16)

スティーブ・ジョブズの再臨―世界を求めた男の失脚、挫折、そして復活

スティーブ・ジョブズの再臨―世界を求めた男の失脚、挫折、そして復活

  • 作者: アランデウッチマン,Alan Deutschman,大谷和利
  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 単行本
  • 購入: 3人 クリック: 18回
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マーケティングとはお芝居なのです。ショーの演出をするようなものです。——ジョン・スカリー
ジョン・スカリー - Wikipedia

『プレゼンテーションZen』(ビアソンエデュケーション刊)の著者、ガー・レイノルズ
「最初に紙と鉛筆を使い、『アナログ世界』でアイデアをざっくりまとめておくと何かが違う。そのアイデアをデジタル技術を使って提示するとき、なぜか、明快かつ創造的となり、優れたプレゼンテーションになるのだ」(p.25)

プレゼンテーションZEN 第2版

プレゼンテーションZEN 第2版

デザインの専門家はみな、プレゼンターは考えること、スケッチすること、筋書きを作ることに時間の大半を投入すべきだと言う。
ナンシー・デュアルテも、30枚のスライドを使う1時間のプレゼンテーションを作るためには最大で90時間もの準備をする必要があるが、スライドを作る時間はその3分の1に抑えるべきだと言う。最初の27時間は、話の種を探す、専門家に話を聞く、アイデアを整理する、仲間と話をする、話の流れを大まかに組み立てるといったことに費やすのだ。(p.25)